答えから書きます。フロアコーティングは、床の表面に保護膜をつくる施工です。床そのものを張り替えるのではありません。いま入っている床の上に、膜を1枚足します。目的は、傷と汚れが床材に直接届かないようにすることです。この記事では、仕組み、効果の範囲、向いている床と向かない床を順に整理します。専門用語は最小限にします。
フロアコーティングとは、床に保護膜をつくる施工です
フローリングの表面には、もともとメーカーの塗装が乗っています。ただしこの塗装は、家具の脚や砂粒、水や洗剤に毎日さらされる前提でつくられていません。使ううちに削れて、その下の層が出てきます。
フロアコーティングは、この表面にもう1枚の膜を足す施工です。膜は液体の状態で塗り、乾いて硬くなります。硬くなったあとは、拭き掃除では剥がれません。ここが、次に書くワックスとの分かれ目です。
施工の中身を分けると、次の3つになります。
- 床の汚れと既存のワックスを落とし、下地を整える
- 床材と目的に合ったコーティング剤を、決めた厚みで塗る
- 硬化するまで床を使わずに置く
この3つのうち、仕上がりを左右するのは1つ目です。下地に汚れやワックスが残ったまま塗ると、膜が床に密着しません。時間をかけるのはここです。なお、2つ目で使うコーティング剤には種類があります。膜をつくる5種類と、防汚に振ったタイプの違いはフロアコーティングの種類と特徴に整理しました。
ワックスとの違いは、塗り直しを前提にするかどうか
いちばん多い誤解なので、先に片付けます。ワックスとコーティングは別物です。
| ワックス | フロアコーティング | |
|---|---|---|
| 床との関係 | 表面に乗せる | 下地を整えて密着させる |
| 塗り直し | 定期的に行う前提 | 前提にしていない |
| 落ち方 | 専用の剥離剤で落とせる | 日常の掃除では落ちない |
| 作業する人 | ご自身でもできる | 下地処理と乾燥管理が要る |
どちらが上という話ではありません。塗り直しを苦にしない方には、ワックスのほうが合います。塗り直しの手間そのものを無くしたい場合に、コーティングを選ぶ理由が出てきます。
すでにワックスが塗ってある床にコーティングをする場合は、先にワックスを剥がします。ワックスの層が残っていると、その層ごと膜が浮くためです。剥離の手間は、施工範囲と塗り重ねの回数で変わります。
膜ができるまでの仕組み
「塗ったら固まる」の中身を、もう少し細かく書きます。
- 確認。床材の種類と状態を見ます。木の種類、表面の仕上げ、傷や水じみの有無を確認します
- 洗浄と下地処理。汚れ、皮脂、既存のワックスを落とします。ここで密着の可否が決まります
- 養生。壁、巾木、建具など、床以外にかからないように覆います
- 塗布。コーティング剤を、決めた厚みで均一に伸ばします。厚みは剤の種類で変わります
- 硬化。溶剤が抜け、成分どうしがつながって固い膜になります
硬化にかかる時間は、剤の種類、室温、湿度で変わります。歩けるようになる時間と、家具を戻せる時間は別です。日程を組むときは、この2つを分けて確認してください。
硬化の途中で床を使うと、そこだけ膜が均一になりません。乾燥時間は短縮できない工程です。
コーティングで変わること、変わらないこと
効果は、できることとできないことをセットで見たほうが早く分かります。まず、変わることです。
- 汚れが床材に染み込む前に、拭き取りで落とせる
- 砂やペットの爪による細かい擦り傷が入りにくくなる
- ワックスの塗り直しが要らなくなる
- 剤によっては、水にぬれたときの滑りにくさを足せる
次に、変わらないことです。ここを先に知っておくと、あとで食い違いません。
- すでに入っている傷や色の抜けは、コーティングでは消えません
- 重い物を落とせば、膜ごと床材がへこみます
- 床鳴りや床のたわみは下地の話なので、変わりません
- 日差しによる色の変化を、完全に止めるものではありません
この「変わること」と「変わらないこと」を、メリット4項目・デメリット4項目の形で並べ直したものはフロアコーティングのメリットとデメリット8項目にまとめています。
もうひとつ、艶の出方は施工内容で変わります。光沢を強く出すものもあれば、艶を抑えて木の質感を残すものもあります。写真だけで決めると、仕上がってから印象が違うということが起こります。実物のサンプルを自宅の床に置いて、昼と夜の照明で見るのが確実です。この手のつまずきはフロアコーティングの後悔4パターンにまとめています。
向いている床と、向かない床
床材によって、保護の効きしろが違います。
| 床の種類・状態 | 相性 |
|---|---|
| 木のフローリング(突板・シートを含む) | 向いています。表面の摩耗を受け止める相手がはっきりしています |
| 無垢材 | 施工はできますが、溶剤を吸い込むため下地処理の前提が変わります |
| タイル・石材 | もともと硬く水に強いので、居室の床を守る目的では優先度が下がります |
| クッションフロア | 塩ビ製で水を通しません。傷んでも部分的に張り替えられます |
| 張り替えやリフォームの予定がある床 | 保護する対象が手元に残らないため、見送りで問題ありません |
床材のほかに、住み方でも分かれます。数年で住み替える予定がある。床の細かい傷が、生活の跡として気にならない。このどちらかに当てはまるなら、施工しないという判断で問題ありません。床の条件から見た判断はフロアコーティングはいらない?に詳しく書いています。
床のほかに施工できる場所
「フロアコーティング」という言葉は床を指しますが、同じ考え方の施工は水まわりにもあります。浴室、洗面台、キッチンのシンク、トイレです。
ただし、使う剤は床と同じではありません。水まわりは、水と洗剤と温度差が毎日かかる場所です。付く汚れの種類も違います。床は砂と皮脂、水まわりは水垢と石けんカス、そしてカビです。剤は場所ごとに選び分けます。
ですから、タイルの床でも浴室の中なら施工する意味が出ます。ひとつ前の表で「タイル・石材は優先度が下がる」と書いたのは、居室の床の話です。同じ素材でも、置かれている場所で判断が変わります。
検討するときの順番
進め方を4つに分けます。上から順に決めていくと、途中で戻らずに済みます。
- その床を、これから何年使うつもりかを決める。ここが短ければ、以降は考えなくていいです
- 範囲を決める。全室一括である必要はありません。人と椅子が動く場所から順に絞れます
- 時期を決める。入居前と入居後では工程が変わります
- 見積書の中身を見る。総額1行ではなく、部位ごとに分かれているかを確認します
3つ目を補足します。生活が始まった床には皮脂汚れが乗るため、コーティングの前に洗浄の工程が加わります。傷が入っていれば、補修は別の工事です。家具があれば動かしながらの作業になります。工程と費用の構成がどう変わるかは入居前と入居後のフロアコーティングの違いに分けて書いています。
4つ目は、比べ方の話です。㎡単価だけを横に並べても比べられません。面積の数え方、床材、剤の膜厚で前提が変わるためです。見積書のどこを見るかはフロアコーティング見積もり比較に6項目で整理しています。
当店が扱う剤の種類と、それぞれ何を優先しているかはコーティングの選び方に出しています。部位ごとの金額は単品ごとの価格表で先に見られます。この記事で金額を出さないのは、素材と状態と範囲で動くためです。
よくある質問
コーティングした床は何年もちますか?
年数は断定できません。床材、下地処理の有無、日当たりと湿度、その家での使い方で差が出るためです。なお、当店のセラミックコーティングと、フロア専用のガラスコーティング厚膜には10年保証があります。ただし保証年数と持続年数は別物です。保証には対象外の条件もあり、日常生活での傷や、他業者による補修後などは対象になりません。
施工中も家に住んだままでいられますか?
住みながらでもできます。ただし、施工した部屋は硬化するまで使えません。1部屋ずつ、あるいはフロアごとに区切って進めます。荷物の一時的な移動先が必要になるため、範囲と日程は先に決めます。
中古住宅や、住んで何年か経った床でもできますか?
できます。入居前より工程が増えるだけです。皮脂汚れの洗浄が加わり、既存のワックスがあれば剥離します。深い傷や色の抜けは、コーティングでは消えないため、補修するかどうかを別に決めます。
コーティングした床は、普段どう掃除しますか?
掃除機と、固く絞った水拭きで足ります。ワックスの塗り直しは要りません。研磨剤の入った洗剤や、たわしのように硬いものでこするのは避けてください。膜に細かい傷が入ります。
1部屋だけ、階段だけでも頼めますか?
頼めます。負荷の大きい場所から先に施工して、様子を見てから広げる進め方もできます。ただし、分けるほど出張と養生が回数分かかるため、1回あたりの単価は上がります。
まとめ
フロアコーティングは、床の上に保護膜を1枚足す施工です。傷と汚れが床材に直接届かないようにするのが目的で、床そのものを新品に戻すものではありません。ワックスとの違いは、塗り直しを前提にするかどうかにあります。向いているのは、木の床を長く使う予定があり、傷と手入れの手間を減らしたい場合です。逆に、住み替えが近い床、張り替えの予定がある床、もともと水と傷に強い床では、優先度が下がります。決めるときは、その床を何年使うか、範囲、時期、見積書の中身の順で見ていきます。