結論から書きます。フロアコーティングの見積もりは、㎡単価を横に並べても比べたことになりません。㎡単価は、何を1㎡と数えるか、どの床材を前提にするか、どのコーティング剤をどの厚みで塗るか。この3つが決まって初めて出てくる数字だからです。前提がそろっていない単価を並べるのは、単位の違う数字を並べているのと変わりません。この記事では、見積書のどこを見れば前提をそろえられるのかを、施工する側から6項目に分けて書きます。

㎡単価が比べられない理由

同じ「1㎡あたり」という書き方でも、中身は次の3つで動きます。

動く前提何が変わるか
面積の数え方家具の下・クローゼットの中・玄関まわりを含むかどうかで、総面積が変わります
床材シートや突板などの加工木材と、無垢材とでは必要な工程が違います
コーティング剤と膜厚種類が同じでも、薄い膜と厚い膜では使う量と工程が変わります

この3つがそろっていない状態で単価だけを比べると、安いほうを選んだのに総額は高かった、という結果になります。逆に言えば、前提を書き出させることさえできれば、比較そのものは難しくありません。以下の6項目は、見積書に書いてあるかどうかをその場で確認できるものだけを並べています。施工の中身そのものがまだ曖昧な方は、先にフロアコーティングとはで仕組みと効果の範囲を確認してください。

見積書で見る6項目

1. 施工範囲|どこまでが入っているか

まず、どの部屋のどこまでが入っているかを見ます。「LDK一式」「1階フロア」といった書き方だと、廊下・階段・洗面所・玄関の上がり口が入っているか分かりません。ここが各社でずれると、総額の差の大半がこの1点で説明できてしまいます。

見積書が総額1行になっている場合は、部屋ごと・部位ごとに分けたものを出してもらいます。分かれていれば、予算に合わせて削る場所を自分で選べます。分かれていないと、削る交渉が「全体から値引き」の話にしかなりません。

2. 面積の出し方|何を1㎡と数えているか

次に、その面積がどうやって出た数字かを見ます。図面の畳数から機械的に計算した数字なのか、実際に測った数字なのか。家具や造作の下を差し引いているのか、部屋全体を面積として数えているのか。ここで数え方が違えば、単価が同じでも総額は変わります。

入居後の施工では、動かせない家具の下は施工できません。その分を面積から引いているかどうかも見る場所です。工程と条件が入居前後でどう変わるかは入居前と入居後のフロアコーティングの違いに分けて書いています。

3. 床材と品番|同じ「床」でも中身が違う

床材の種類と品番が見積書に書かれているかを見ます。ここは価格に直結します。無垢材は溶剤を吸い込むため、コーティングの前に下地処理の工程が必要です。加工木材はそこまでの工程が要らない代わりに、表面の仕上げによって相性が分かれます。

施工後の床。木目は見えますが、写真だけでは床材の種類までは分かりません

当店は現地で、お客様の許可をいただいたうえで床に水を1滴垂らし、吸い込み方を見ます。吸う床と吸わない床では、必要な工程も使う量も変わるからです。床材の確認をしないまま出てきた単価は、どちらの前提で計算されたのか分かりません。

4. 下地処理・既存ワックス・劣化の扱い|込みか、別か

下地処理が金額に含まれているのか、別項目なのか、そもそも書かれていないのかを見ます。ここが書かれていない見積書は、あとから条件が変わる余地を残しています。

特に見る場所が既存ワックスです。ワックスが塗られた床にそのままコーティングをすると、密着するのはワックスの層であって床材ではありません。剥離の工程が必要になりますが、これは面積分の手間がまるごと増える作業です。中古住宅や居住中の施工では、傷・汚れ・色の抜けをどう扱うかも同じように書かれているかを見ます。

5. コーティング剤の名前と膜厚|名前だけでは厚みが分からない

コーティング剤は、種類の名前だけでは比べられません。同じ系統の剤でも、薄い膜と厚い膜では使う量が変わり、価格も変わります。見積書に種類名しか書かれていないなら、膜の厚みまで書いてもらいます。

加えて、その剤を選ぶ理由が説明できるかどうかも見る場所です。床材と使い方に対して何を優先した選択なのか。当店が扱う剤の種類と、それぞれ何を優先しているかはコーティングの選び方に出しています。

6. 施工条件|養生・家具移動・使用再開までの時間

最後に、施工そのもの以外の条件を見ます。養生の費用が含まれているか。家具の移動を誰がやるのか。施工した部屋をいつからまた使えるのか。この3つは、金額よりも生活への影響として効いてきます。

施工後の床。幅木の際に養生テープが残っている状態です

使用再開までの時間は、施工する場所と使うコーティング剤で変わります。表面が乾いた状態と、膜が完全に硬くなった状態は別物です。硬くなりきる前に家具を戻すと、跡が残ることがあります。ここが書かれていない見積書は、引っ越し日程と噛み合うかどうかを判断できません。

総額が同じでも、中身が同じとは限りません

6項目を確認すると、総額が近い見積書どうしでも中身が違うことが見えてきます。面積の数え方が違うのか、剤の厚みが違うのか、下地処理の扱いが違うのか。差の理由が1つに絞れたら、そこだけを各社に聞き直します。

比べるときは、次の形に書き直すと差が見えます。項目を縦に並べ、各社を横に置くだけです。

  • 施工する部屋と部位(入っているもの/入っていないもの)
  • 面積と、その面積の出し方
  • 床材の種類と品番
  • 下地処理・既存ワックスの扱い
  • コーティング剤の種類と膜厚
  • 養生・家具移動・使用再開までの時間

当店の場合、部位ごとにどう金額が分かれるかは単品ごとの価格表で先に見られます。項目が分かれた見積書がどういうものかを知っておくと、他の見積書を見るときの物差しになります。

年数の書き方は、数字より条件を見ます

見積書や提案資料には、持ちの年数が書かれていることがあります。ここで見るのは数字の大小ではなく、その数字にどんな条件が添えられているかです。床材の種類、下地処理の有無、日当たりと湿度、その家での使い方。どれか1つ違うだけで結果は変わります。

当店が年数を断定しないのはこのためです。他社の数字を否定したいのではありません。前提と対象外の条件がどこまで書かれているかを見る、という話です。この考え方はフロアコーティングはいらない?にも書いています。

見積もりが出てくるまでの手順も見ます

金額そのものより先に見られるものがあります。その見積もりが、何を確認したうえで出てきたかです。

当店は、写真か図面の確認、または現地調査で床材と状態と範囲を確かめてから正式な見積もりを出します。順番が逆になっている見積もり、つまり床を一度も見ないまま出てきた金額は、条件が変わったときに動きます。契約前に確認しておく点はフロアコーティングの後悔4パターンにまとめています。

よくある質問

見積もりは何社から取るのがいいですか?

社数よりも、同じ条件で出してもらうことのほうが効きます。範囲・床材・剤の厚みがそろっていない見積書は、何枚集めても比べられません。条件をそろえた2枚のほうが、そろっていない5枚より判断できます。

相見積もりだと伝えても大丈夫ですか?

問題ありません。むしろ伝えてもらったほうが、こちらも前提を書き込んだ見積書を出します。他社と条件を合わせるために、どの範囲・どの厚みで出したかを明記する必要が出てくるからです。

現地を見てもらわずに金額を出してもらえますか?

概算なら出せます。床材が分かる写真、間取りが分かる図面、施工したい範囲。この3つがあれば範囲は絞れます。ただし、既存ワックスの有無や劣化の程度は写真だけでは分からないことがあるため、正式な金額は確認後になります。

見積書に無かった作業が、後から出てくることはありますか?

可能性はあります。開けてみないと分からない部分が床にはあるためです。減らす方法は1つで、下地処理・既存ワックス・劣化した部分の扱いを、契約前に見積書へ書いてもらうことです。書いてあれば、追加になる条件も先に分かります。

総額がいちばん安い見積もりを選んで問題ないですか?

6項目がそろっていて、そのうえで安いなら問題ありません。判断できないのは、項目がそろっていないまま安い場合です。範囲が狭い、下地処理が入っていない、膜が薄い。安い理由が説明できるなら、それも1つの選び方になります。

まとめ

㎡単価は、面積の数え方・床材・剤の厚みが決まって初めて意味を持つ数字です。見積書で見るのは6項目。施工範囲、面積の出し方、床材と品番、下地処理と既存ワックスの扱い、コーティング剤の種類と膜厚、養生と家具移動と使用再開までの時間。この6つを縦に並べて各社を横に置けば、差がどこから来ているかが分かります。差の理由が1つに絞れたら、そこだけを聞き直します。安いほうを選ぶこと自体は問題ありません。安い理由が説明できないまま選ぶことが、あとで効いてきます。