答えから書きます。フロアコーティングは、全員がやるべき施工ではありません。床を使う期間が短い、床材がもともと傷や水に強い、床の状態をあまり気にしない。このどれかに当てはまるなら、施工しないという判断で問題ありません。施工する側の立場でも、ここは変わりません。この記事では、施工しなくていい床の条件を先に並べます。そのうえで、必要になりやすい床の条件と、いる・いらないの分かれ目を書きます。
施工しなくていい床の条件
次のどれかに当てはまるなら、フロアコーティングの優先度は下がります。
- 数年以内に住み替え・売却の予定がある
- 賃貸で、退去時の原状回復が前提になっている
- 床材がタイル・石材・クッションフロアなど、もともと水や傷に強いもの
- 床の細かい傷や艶のムラが、そもそも気にならない
- 近いうちに床の張り替えやリフォームを予定している
- 他に優先したい出費があり、床は後回しと決めている
理由は単純です。フロアコーティングは、その床を使い続ける期間が長いほど意味が出る施工だからです。住み替えが近い、張り替える予定がある。この場合は、保護する対象そのものが手元に残りません。
床材の相性もあります。タイルや石材は表面が硬く、水にも強い素材です。クッションフロアは塩ビ製で、そもそも水を通しません。傷が入ったときも、部分的に張り替えられます。こうした床は、コーティングで守る必要性が木のフローリングほど高くありません。
そして、いちばん大きいのは好みです。床の細かい傷が生活の跡として気にならない方に、コーティングは向きません。艶が乗ることを「きれいになった」と感じるか、「うちの床じゃないみたい」と感じるかも人によります。ここは性能の話ではないので、他人が決められません。
「いらない」と言われる理由を分解します
「いらない」という言葉の背景には、だいたい次の4つがあります。理由ごとに、当てはまる場合と当てはまらない場合が分かれます。
| 言われる理由 | 実際のところ |
|---|---|
| 金額が大きい | 面積で金額が動くため、範囲を絞れば下がります。全室一括だけが選択肢ではありません |
| ワックスで足りるのでは | 塗り直しを続ける前提ならワックスで足ります。塗り直しの手間を無くしたい場合は別の施工になります |
| 効果が実感しにくい | 差が出るのは掃除のときです。汚れが染み込む前に拭き取れるかどうかで変わります |
| 年数の説明が各社で違う | 前提条件がそろっていないためです。数字だけを横に並べても比べられません |
この中で誤解が多いのはワックスとの比較です。ワックスは床の表面に乗せる仕上げ剤で、定期的な塗り直しが前提です。コーティングは下地を整えたうえで密着させる保護膜で、塗り直しを前提にしていません。どちらが上という話ではなく、塗り直しを自分で続けるか、最初にまとめて片付けるかの違いです。塗り直しを苦にしない方には、ワックスのほうが合います。コーティングの仕組みと効果の範囲そのものはフロアコーティングとはにまとめています。
年数についても書いておきます。床の状態がどれくらい保たれるかは、床材の種類、下地処理の有無、日当たりと湿度、その家での使い方で変わります。当店が年数を断定しないのはこのためです。他社の数字を否定したいのではありません。その数字がどんな条件を前提にしていて、どんな場合が対象外なのか。そこまで書かれているかを見ます。条件のない数字は、そのままでは比べられません。
逆に、施工したほうがいい床の条件
ここまでの裏返しです。次の条件が重なるほど、施工する意味は大きくなります。
- 持ち家で、その床を長く使う前提がある
- 床材が無垢材・突板など、木の質感を残したもの
- 小さなお子様やペットがいて、傷と滑りの両方が気になる
- 共働きなどで、床の手入れにかけられる時間が短い
- 入居前で、これから家具を入れる段階にある
床材の話を少し足します。木のフローリングは、表面の仕上げが削れると下の層が出てきます。無垢材のように溶剤を吸い込む床材では、コーティングの前に下地処理が必要です。逆に言えば、木の床は保護の効きしろが大きい素材です。
見落とされやすいのが階段です。面積は小さいのに、家の中でいちばん足が集中する場所です。踏み面の縁は摩耗が早く、傷や色の抜けが目立ちます。床全体は見送るとしても、階段だけ先に施工するという組み方はできます。
いる・いらないは、この2つの質問で分かれます
条件を並べましたが、最後は2つに集約されます。
- その床を、これからどれくらい使い続けるつもりか
- 床の傷・汚れ・手入れの手間を、どれくらい減らしたいか
ひとつ目が短く、ふたつ目も小さいなら、施工しないでいいです。ひとつ目が長く、ふたつ目が大きいなら、施工する側に寄ります。片方だけ当てはまる場合は、範囲を絞るのが現実的です。
| 床を長く使う | 数年で住み替え | |
|---|---|---|
| 傷と手入れが気になる | 施工が向いています | 負荷の大きい場所だけに絞る |
| あまり気にならない | 入居前なら選択肢に入る。入居後は急ぎません | 施工しないでいいです |
もうひとつ、判断の前に見ておくものがあります。艶の程度です。コーティングは施工内容によって艶の出方が変わります。光沢を強く出すタイプもあれば、艶を抑えて木の質感を残すタイプもあります。写真だけで決めると、仕上がってから「思っていたのと違う」になります。実物のサンプルを自宅の床に置いて、昼と夜の両方の照明で見るのが確実です。この手のつまずきはフロアコーティングの後悔4パターンにまとめています。
「全部やる」か「やらない」かの二択ではありません
「いらない」に行き着く方の多くは、全室一括の見積りを見て判断しています。フロアコーティングは施工面積で金額が動くので、全室でまとめればその分かかります。
実際には、傷と汚れの入り方は部屋ごとに違います。人と椅子が動くリビング・ダイニング・廊下、水がはねるキッチンまわりは負荷が大きい場所です。寝室や、ほとんど使わない予備室は負荷が小さく済みます。予算に上限があるなら、負荷の大きい場所から順に施工するという選び方があります。
ただし、あとから追加すると、その都度の出張と養生が発生します。分けるほど1回あたりの単価は上がります。この点も含めて、見積りは総額1行ではなく、部屋ごと・部位ごとに分けてもらいます。分かれていれば、削る場所を自分で選べます。部位ごとの金額感は施工内容と価格の目安で先に把握できます。溶剤の種類で厚みと価格がどう対応しているかはコーティング剤のグレードごとの違いに出しています。
「やらない」はいつでも選べます。「安く済む条件でやる」は選べる時期が決まっています
施工しないと決めるのは、いつでもできます。ただし、判断を先送りにすると条件のほうが変わります。入居後にやると工程が増えるからです。
生活が始まった床には皮脂汚れが乗るため、コーティングの前に洗浄の工程が必要になります。傷が入っていれば、補修は別の工事です。家具があれば動かしながらの作業になり、施工と乾燥の間はその部屋を使えません。入居前なら、工程はコーティングだけです。工程と費用の構成がどう変わるかは入居前と入居後のフロアコーティングの違いに分けて書いています。
入居後でも施工はできます。増えるのは工程と費用であって、選択肢が無くなるわけではありません。
よくある質問
新築でもフロアコーティングはいらないですか?
新築だから必ず必要、というものではありません。判断材料は建物の新しさではなく、その床を長く使うかどうかと、傷や手入れをどれくらい気にするかです。ただし新築で入居前なら、洗浄や補修の工程が要らないぶん、条件としてはいちばん軽く済みます。
ワックスで代用できますか?
塗り直しを続ける前提なら代用できます。ワックスは表面に乗せる仕上げ剤で、定期的な塗り直しが必要です。塗り直しの手間そのものを無くしたい場合は、代用にはなりません。
コーティングしないと床はすぐ傷みますか?
すぐ傷むとは限りません。床材と使い方によって差が大きいところです。家具の脚にフェルトを貼る、椅子の下にマットを敷く、砂を持ち込まない。この3つだけでも傷の入り方は変わります。
ペットがいる家でも、いらない場合はありますか?
あります。ペットがいても、床材が傷に強いものだったり、住み替えが近かったりすれば優先度は下がります。逆に、木の床で長く住む予定なら、爪による傷と滑りの両方が理由になります。
とりあえず一部屋だけ試すことはできますか?
できます。負荷の大きいリビングや廊下から先に施工して、様子を見てから広げる進め方は現実的です。ただし、分けるほど出張と養生が回数分かかるため、1回あたりの単価は上がります。
まとめ
フロアコーティングがいらない床は、確かにあります。住み替えが近い、床材がもともと強い、床の状態が気にならない。この場合は施工しないでいいです。逆に、木の床を長く使う予定があり、傷と手入れの手間を減らしたいなら、施工する意味があります。決め方は2つの質問だけです。その床をどれくらい使うか。手入れの手間をどれくらい減らしたいか。そして、やると決めても、全室一括である必要はありません。