施工後のキッチン。天板とシンクがステンレスで、右奥に木の床の廊下が見えています

先に結論を書きます。新築の水まわりコーティングに、必要・不要という一律の決まりはありません。決まるのは家単位ではなく、場所単位です。同じ家の中でも、キッチンのシンクと浴室の鏡では、付く汚れの種類も、面の素材も、掃除の手の届きやすさも違います。だから「水まわりを全部やるか、やらないか」で考えると答えが出ません。この記事は、キッチン・浴室・洗面台・鏡・トイレの5か所を1つずつ見て、先に決めておく場所と、後に回してよい場所を切り分けます。

場所を切り分ける材料は3つです

どの場所にも同じ3つを当てはめます。金額や剤の名前から入ると比べられなくなるので、先にこちらをそろえます。

材料見るところここで決まること
汚れの性質乾いたあとに残るのが水垢か、油か、皮脂か落とすときの手間の重さ
面の素材ステンレス・人工大理石・陶器・樹脂パネル・鏡のどれか使える剤と、施工できるかどうか
掃除の届きにくさ毎日ついでに拭ける場所か、身をかがめないと届かない場所か汚れが積み上がる速さ

3つ目が、実際にはいちばん効きます。汚れが付くこと自体は避けられませんが、付いたその日に拭ける場所は積み上がりません。逆に、手が届きにくい場所ほど「気づいたときには落ちにくくなっている」という順路をたどります。新築の段階では、この順路の入口に立っているだけで、まだ何も起きていません。

キッチンは、毎日使う面から順に決めます

キッチンで施工の対象になるのは、シンク、天板、コンロまわり、レンジフードです。ここは水と油と洗剤が同じ場所に当たる、家の中で唯一の場所です。

シンクと天板は、素材で見え方が変わります。ステンレスは細かい擦り傷が入りやすく、光の向きによって傷の集まりが白っぽく見えます。人工大理石は、色の濃い汁や調味料をそのままにしたときのあとが残りやすい面です。どちらも、毎日使うぶん汚れが乗る回数が最も多い場所になります。

コンロまわりとレンジフードは、汚れの性質が油に寄ります。使うたびに拭く場所ではないため、拭き取りの間隔が空きやすく、時間がたつほど固まります。

優先順を付けるなら、シンクと天板が先、コンロまわりとレンジフードがその次です。前者は毎日触れる面で、施工の効きを実感しやすい場所でもあります。

浴室は、ぬれやすい場所から範囲を決めます

施工後の浴槽。奥は白い壁パネルで、浴槽の底には細かい凹凸が並んでいます

浴室の対象は、浴槽、床、壁、水栓です。ここに残る汚れの中心は水垢で、水道水に含まれる成分が乾いたあとに残ったものです。拭き上げるかどうかで、残る量に差が出ます。

床は、表面に細かい凹凸や溝があることが多く、水が抜けきるまでに時間がかかります。皮脂や石けんの成分も一緒に残るため、他の面より汚れが重なりやすい場所です。ぬれやすい場所から優先して範囲を決めると、順番を間違えません。

壁は面積が大きく、全面にするか一部にするかで範囲そのものが変わります。範囲の広さがそのまま費用に効くので、ここは先に決めておきます。水栓は面積こそ小さいものの、水が最後まで残る形をしているぶん、水垢が集まりやすい部位です。

優先順としては、浴槽と床が先です。壁と水栓は、範囲と予算を見ながら足し引きする位置づけになります。浴室の汚れに対してコーティングがどこまで効くのかは浴室コーティングの効果に、水垢・石けんカス・黒ずみの3つに分けて書いています。

洗面台は、ボウルの底と天板を見ます

洗面台は、ボウルと天板が対象です。歯磨き粉、整髪料、石けん、化粧品が毎日当たり、しかも流したあとの水が底に残ります。素材は人工大理石か陶器が中心で、いずれも汚れが染み込むというより、表面に固着していく形で残ります。

家族の人数が多いほど、1日に使われる回数が増えます。使用回数の多い家では、キッチンと同じ優先度で見て問題ありません。

鏡だけは、使う剤の考え方が違います

施工後の浴室の鏡。鏡には出入口の扉と浴槽が映り込んでいます。右はシャワーのホースです

浴室の鏡と洗面台の鏡は、水まわりの中で扱いが別になります。

まず汚れの側から。鏡に残る水垢は、水滴が乾くたびに同じ場所へ積み重なり、うろこ状の跡になります。ここまで固まると、家庭にある洗剤では戻りにくくなります。新築の鏡は、この積み重ねがまだ1回も起きていない状態です。すでに積み重なった鏡をどう見るかは浴室の鏡のウロコが取れない理由に書いています。

そして剤の側。鏡にはセラミックコーティングを使いません。鏡に使うのは、水垢の付着を抑えることに特化した超親水コーティングです。鏡に対しては、これが最も保護力のある選択になります。他の部位と同じ物差しで「保護性能重視ならセラミック」と読み替えないでください。ここだけは剤が別です。

トイレは、掃除の分担で決まります

トイレは、便器と手洗い部が対象です。汚れの性質が他の4か所と少し違い、水垢に加えて尿の成分が残ります。面積が小さいので範囲の判断は簡単ですが、掃除の頻度が家庭ごとにいちばん分かれる場所でもあります。

掃除を誰がどれくらいの頻度でやるかが決まっている家では、優先度は下がります。逆に、そこが決まっていない家ほど先に入れておく意味が出ます。

使う剤は3つのグレードから選びます

水まわりは、保護性能重視・バランス・手軽な防汚の3つのグレードから選びます。保護性能を優先する場合の中心はセラミックコーティングです。ただし前の章で書いたとおり、鏡だけは超親水コーティングになります。

もう1つ、並べ方の注意があります。手軽な防汚にあたる超撥水コーティングは、膜をつくるコーティングではなく、汚れの付きにくさだけに振ったお手軽なタイプです。他の2つと同じ表に並べて優劣を比べるものではない、という前提で見てください。

持ちの年数については、こちらから断定しません。水の当たり方、換気の状況、拭き上げの習慣、使う洗剤とスポンジで変わります。同じ剤を同じように施工しても、環境条件で結果は動きます。年数の数字を判断の軸に置かないほうが確実です。剤の種類そのものと、どの場所にどれを使うかの一覧はフロアコーティングの種類と特徴に整理しています。部位ごとの内容は単品ごとの価格表で先に見られます。

新築で変わるのは、必要性ではなく施工の条件です

「新築だから水まわりもやったほうがいい」と言われることがあります。正確には、新築で変わるのは必要性ではなく、施工に入るときの条件のほうです。

使い始める前の水まわりには、固着した水垢も、日々の皮脂汚れも乗っていません。つまり、コーティングの前に落とす工程がありません。使い始めたあとだと、まず水垢を落とす工程が先に入り、落としきれなかった面にはそのまま施工できません。ここが、入居前と入居後でいちばん大きく違う点です。

もう1つは日数です。設備の引き渡しが済んでから、洗濯機や収納用品を持ち込むまでの間が、いちばん手を入れやすい時期になります。この期間の長さで、入れられる範囲が決まります。

ただし、条件がいいことと、その家に必要であることは別です。掃除を苦にしない、住む年数が短い、というのであれば、条件がどれだけよくても見送りでかまいません。床のほうを同じように順番で決めていく話は新築にフロアコーティングは必要かに書いています。

よくある質問

水まわりは、まとめて全部やったほうがいいですか?

全部である必要はありません。汚れの性質も素材も場所ごとに違うので、まとめて決める理由がありません。毎日触れる面から順に、シンクと天板、浴槽と床、洗面ボウル、鏡という順で見ていくと決めやすくなります。

鏡だけ頼むこともできますか?

できます。水まわりは部位ごとに単品で分かれているので、1か所だけを選ぶことも、部屋ごとにまとめることもできます。

何年もちますか?

年数は断定しません。水の当たり方、換気、拭き上げの習慣で変わるためです。同じ浴室の中でも、浴槽と床と鏡では条件が違います。年数を約束する説明を見かけたら、どの前提での数字なのか、対象外の条件がどこまで書かれているかを確認してください。

入居してからでは遅いですか?

遅くはありません。入居後でも施工はできます。増えるのは工程で、固着した水垢を落とす作業が先に入ります。落としきれない場合は、その面だけ範囲から外すこともあります。選択肢が無くなるわけではなく、工程と日程が変わるという話です。

コーティングをすれば掃除はいらなくなりますか?

いりません、とは言えません。変わるのは、汚れが付いたときの落としやすさのほうです。拭く回数がゼロになる施工ではありません。

まとめ

新築の水まわりコーティングが必要かどうかは、家単位では決まりません。場所ごとに、汚れの性質、面の素材、掃除の届きにくさの3つを当てはめて切り分けます。毎日触れて汚れが乗る回数が多い面ほど、先に決める理由が出ます。剤は保護性能重視・バランス・手軽な防汚の3つのグレードから選び、保護性能を優先する場合の中心はセラミックコーティングですが、鏡だけは超親水コーティングになります。そして新築で本当に変わるのは、必要性ではなく、落とす工程が要らないという施工条件のほうです。