施工後の1階。右手は階段の上がり口で、奥からの光が床に映り込んでいます

先に結論を書きます。新築だからフロアコーティングが必要、という決まりはありません。必要かどうかは家ごとに変わります。ただし、決める順番は同じです。1つめに、その家に何年住むつもりか。2つめに、床材と、引き渡しの書類に書かれている床の仕様。3つめに、生活の負荷が大きい場所はどこか。4つめに、入居日まで何日残っているか。この4つを上から順に答えると、答えは「やる・やらない」ではなく「どこまでやるか」の形で出ます。この記事は、その順番だけを書きます。必要か不要かを、こちらから決めつけません。

判断の順番は4つ。上から順に答えます

先に全体を出します。上の質問ほど、答えが下の質問を打ち消す力を持ちます。1つめで「短い」と出たら、下の3つを考える必要はありません。

順番答えるものここで決まること
1その家に何年住むつもりかそもそも検討する意味があるか
2床材と、床の仕様保護の効きしろがどれだけあるか
3生活の負荷が大きい場所優先して施工する部屋の順番
4入居日までの残り日数入居前にどこまで入れられるか

この4つは、どれも新築の段階でしか正確に答えられないものではありません。ただ、新築は4つとも今この時点で確認できる、という点が他の時期と違います。図面と仕様書が手元にあり、入居日も決まっているからです。

1. その家に、これから何年住むつもりか

最初に答えるのはここです。フロアコーティングは、床を使い続ける期間が長いほど意味が出る施工だからです。

新築なら長く住む、とは限りません。転勤の可能性がある、数年で実家に戻る予定がある、将来の売却を前提に建てている。こうした場合は、保護する対象が手元に残りません。新築であっても、ここで優先度は下がります。

逆に、この家に長く住むと決まっているなら、1つめの答えは「長い」です。次へ進みます。なお、コーティングが何年もつかという年数は、床材の種類、下地処理の有無、日当たりと湿度、その家での使い方で変わります。環境条件によって動く目安であって、断定できる数字ではありません。年数を根拠に判断を組み立てないほうが確実です。

2. 床材と、引き渡しの書類に書かれている床の仕様

2つめは床そのものです。ここは新築がいちばん有利なところで、床材の名前と仕様が書類に書いてあります。入居後の家では、床を見ただけでは判別できないことがあります。

確認するのは次の3点です。

  • 床材の種類。表面が天然木の無垢材・挽板・突板か、表面が樹脂のシートフローリングか
  • 表面の処理。すでに傷や汚れに強い加工がされていると書かれているか
  • ワックスの可否。「ワックス不要」「ワックス不可」と書かれているか

表面が天然木の床材ほど、保護の効きしろは大きくなります。表面の仕上げが削れると下の層が出るためです。なお、施工の前に下地処理が要るかどうかは床材によって変わります。溶剤の吸い込み方が床材ごとに違うため、実際の床を見てからの確認になります。

一方、表面が樹脂のシートフローリングで、すでに強い加工がされている床は、効きしろが小さめです。ただし「ワックス不要」と書かれていても、傷が入らないという意味ではありません。ワックスの塗り直しが要らないという意味です。この2つは別の話なので、分けて読んでください。

もう1点、艶の出方も新築のうちに見ておきます。今の床がいちばんきれいな状態なので、比較の基準が手元にあります。実物のサンプルを床に置いて、昼と夜の両方で確かめてください。写真だけで決めると、仕上がってから印象が違うことになります。床のコーティングは膜の厚みでグレードが分かれ、厚膜・中膜・薄膜で艶の出方と仕上がりが変わります。違いはコーティング剤のグレードごとの違いに出しています。

3. 生活の負荷が大きい場所を、先に数える

3つめで、範囲を決める材料をそろえます。新築はまだ生活が始まっていないので、実際の汚れではなく、これからの使い方から数えます。

負荷が大きいのは、人と椅子がよく動く場所と、水がはねる場所です。

負荷場所理由
大きいリビング・ダイニング・廊下椅子の脚と、持ち込まれた砂粒が集中する
大きいキッチンの前・洗面所水と油がはね、ぬれた床で滑りやすい
中くらい階段面積は小さいが、踏み面の縁の摩耗が早い
小さい寝室・予備室・納戸人の動きが少なく、傷の入り方が遅い

ここに家族の条件を足します。小さなお子さんがいるなら、ぬれた床で滑りやすい場所を先に見ておくことをおすすめします。犬や猫がいるなら、爪の傷と滑りの両方が理由になります。在宅時間が長い家庭ほど、リビングの負荷は大きくなります。

この時点で、部屋に順番が付きます。全室一括にするかどうかは、まだ決めません。

4. 入居日から逆算して、範囲を確定する

最後が日数です。入居前に施工できるのは、引き渡しから家具を入れるまでの間だけです。この期間の長さで、入れられる範囲が決まります。

この期間には、コーティング以外の予定も入ります。カーテンの採寸と取り付け、エアコンの設置、造作家具の搬入、そして引っ越しそのものです。床の施工は、家具を入れる前に終わっている必要があります。

施工そのものにも時間がかかります。塗ってすぐ歩けるわけではなく、歩ける時間と家具を戻せる時間は別です。硬化にかかる時間は剤の種類、室温、湿度で変わります。範囲が広いほど、日数も養生も増えます。

残り日数が足りないときの選び方は2つです。3つめで付けた順番の上から順に範囲を絞るか、入居後に回すかです。入居後でも施工はできます。増えるのは工程で、生活で乗った皮脂汚れの洗浄が加わり、家具を動かしながらの作業になります。選択肢が無くなるわけではありません。

4つの答えを並べると、範囲が出ます

ここまでの答えを並べます。「必要か」ではなく「どこまでやるか」で出ます。

1. 住む年数2. 床材の効きしろ4. 残り日数出てくる範囲
短い見送ってよい
長い小さい負荷の大きい場所だけ検討する
長い大きい足りない順番の上から絞るか、入居後に回す
長い大きい余裕がある入居前に、決めた範囲まで入れる

ただし、範囲を分けて後から追加すると、その都度の出張と養生が発生します。回数を分けるほど、1回あたりの負担は重くなります。範囲を先に決めてから見積もりを取ると、比べる前提がそろいます。部位ごとの内容は単品ごとの価格表で先に見られます。

新築で変わるのは「必要かどうか」ではなく「条件のよさ」です

「新築には必要」と言われることがあります。正確に言うと、新築で変わるのは必要性ではなく、施工の条件です。

入居前の床には、家具がなく、生活で乗る皮脂汚れもなく、傷も入っていません。洗浄の工程が要らず、補修を別に考える必要もありません。部屋を空けたまま作業できるので、生活の予定と重なりません。この3つがそろうのは、引き渡しから入居までの一度だけです。

逆に言えば、条件がいいことと、その家に必要であることは別です。1つめの答えが「短い」なら、条件がどれだけよくても見送りでかまいません。「今が最も条件のいい時期です」までは事実で、「だから必要です」はこちらが決めることではありません。施工そのものの効きと限界を8項目で並べた総覧はフロアコーティングのメリットとデメリットにまとめています。

よくある質問

新築なら、全室やったほうがいいですか?

全室である必要はありません。傷と汚れの入り方は部屋ごとに違います。人と椅子が動くリビング・廊下、水がはねるキッチンまわりから順に決めて、寝室や予備室は後から判断しても遅くありません。なお、床ではなく浴室やキッチンの設備そのものを施工するかどうかは、別の材料で決めます。判断は新築の水まわりコーティングは必要かに場所別で書いています。

引き渡しの前に施工できますか?

建物の引き渡しが済んでいないと、通常は作業に入れません。実際に施工できるのは引き渡し後から家具を入れるまでの間です。入居日が決まった時点で日数を数えておくと、範囲を決め直さずに済みます。

床材に「ワックス不要」と書いてあります。それでも意味はありますか?

ワックス不要は、塗り直しが要らないという意味で、傷や汚れが入らないという意味ではありません。意味があるかどうかは、住む年数と、その床にどこまで手をかけたいかで変わります。書類の表記だけでは決まりません。

新築のオプションで勧められました。断ってもいいですか?

断ってかまいません。勧められたかどうかは、判断の順番に入っていません。決め方は同じで、住む年数、床材、負荷の大きい場所、残り日数の4つです。範囲と内容が書かれていない提示なら、その場で決めなくて問題ありません。

入居してからでは遅いですか?

遅くはありません。入居後でも施工はできます。増えるのは工程で、皮脂汚れの洗浄が加わり、家具を動かしながら1部屋ずつ進めることになります。工程と日程が変わるだけで、選択肢は残ります。

まとめ

新築にフロアコーティングが必要かどうかは、新築という条件だけでは決まりません。順番に答えます。その家に何年住むか。床材の効きしろはどれだけあるか。負荷の大きい場所はどこか。入居日まで何日あるか。この4つを上から埋めると、範囲の形で答えが出ます。1つめで「短い」と出たなら、そこで終わりで問題ありません。新築で本当に変わるのは、必要性ではなく、洗浄も補修も要らないという施工条件のほうです。