廊下の床のツヤと映り込み。右手に階段の手すり

先に結論を書きます。犬や猫と暮らす家の床で問題になるのは、滑りと爪の傷の2つです。ただし、どちらもコーティングをすれば消えてなくなる、という話にはなりません。滑りにくさは、床に使うガラスコーティングのうちどの膜を選ぶかで変わります。爪の傷は、つきにくくなるところまでです。この記事では、床で実際に何が起きるかを先に整理し、施工しなくていい条件、したほうがいい条件、範囲の決め方の順に書きます。

ペットがいる家の床で何が起きるか

犬や猫は、足の裏で床をつかんで体を支えます。フローリングのように表面が平らで硬い床では、このつかみが効きにくくなります。歩いているぶんには問題がなくても、走り出すとき、止まるとき、方向を変えるときに足が滑ります。滑る回数が多いのは、走る距離が取れる廊下、家具の間で向きを変えるリビング、そして階段です。

2つ目が爪の傷です。爪は歩くだけでも床に当たり、走る・跳ぶ・着地するが加わると当たる力が一段強くなります。この傷は面ではなく線で出るのが特徴で、いつも通る場所に沿って同じ向きの細い傷が並びます。

3つ目が汚れです。水飲みのまわりのはね、粗相、抜け毛。木のフローリングは、水分が長く残るとその部分だけ色が変わることがあります。

3つに共通するのは、負荷が家じゅうに均等ではないという点です。ペットが通る道は決まっていて、滑りも傷も汚れもそこに集まります。この偏りが、あとで範囲を決めるときの材料になります。

施工しなくていい条件

次のどれかに当てはまるなら、急ぐ理由はありません。

  • 賃貸で、退去時の原状回復が前提になっている
  • 床材がタイルやクッションフロアなど、もともと水と傷に強いもの
  • ペットの生活範囲がケージやサークルの中に収まっている
  • 数年以内に住み替えや床の張り替えを予定している
  • すでにマットを敷いていて、滑りにもめくれにも困っていない

特に多いのがマットとの兼ね合いです。マットを敷いて問題が起きていないなら、そのままで足ります。判断が分かれるのは、部屋いっぱいに敷きたくない場合と、敷いても端がめくれてかえって危ない場合です。床材や住む年数から見た線引きはフロアコーティングはいらない?にまとめています。

施工したほうがいい条件

逆に、次の条件が重なるほど優先度は上がります。

  • 木のフローリングで、その床を長く使う予定がある
  • 走る・跳ぶが多く、体重のある犬と暮らしている
  • シニア期に入っていて、足腰にかかる負担を減らしたい
  • 廊下や階段など、通る場所がはっきり決まっている
  • 部屋いっぱいにマットを敷きたくない、または端のめくれが気になる
  • 入居前で、まだ家具が入っていない

木のフローリングは、表面の仕上げが削れると下の層が出てきます。爪のように細い力が同じ場所へ繰り返し当たる使い方では、この削れが線として残ります。逆に言えば、保護の効きしろが大きい素材だということです。

滑りにくさは、選ぶ膜で変わります

床に使うのはガラスコーティングです。当店ではセラミックコーティングと超撥水コーティングを床に使うことはありません。そのガラスコーティングの中に、膜の厚みで分かれる厚膜・中膜・薄膜の3つがあります。

滑りに関して選ぶのは、このうち厚膜と中膜です。

求めるもの選ぶもの
滑り止めGFガラスコーティング厚膜
軽い滑り止めGFガラスコーティング中膜

厚膜と中膜は溶剤が同じで、違うのは中身の配合比率です。薄膜はこの2つとは溶剤から違う別の剤にあたりますが、ガラスコーティングであることは3つとも変わりません。価格表では厚膜が「ガラスコーティングGFM厚膜」、中膜が「ガラスコーティングGFM中膜」という表記になっています。剤の種類そのものの違いはフロアコーティングの種類と特徴に整理しました。

そのうえで、はっきり書いておきます。コーティングをすれば滑らなくなる、とは言えません。選べるのは滑りにくさの度合いであって、床の上で二度と足を取られなくなる施工ではありません。

滑りにくさは、床材の種類、その子の体重と走り方、爪の長さでも変わります。同じ施工をしても、家によって体感の差が出るところです。

もう1点、艶との関係も先に決めておきます。艶を強く出すほど、表面はなめらかな方向に寄ります。艶の見え方と滑りにくさのどちらを優先するかは、契約の前に決めておく項目です。この手のつまずきはフロアコーティングの後悔4パターンに整理しています。

爪の傷はどこまで変わるか

膜があると、爪が床材に直接当たらなくなります。生活のなかで少しずつ増えていく細かい擦り傷は、ここで受け止められます。書けるのはここまでで、傷がつきにくくなる、という言い方になります。

逆に、変わらないところも書いておきます。

  • すでに床に入っている傷は、コーティングでは消えません。補修は別の工事になります
  • 爪が引っかかって深くえぐれるような傷は、膜の厚みで受け止められる範囲を超えます
  • コーティングの表面そのものにも、使い続ければ傷は入ります

無傷の床が手に入るわけではありません。変わるのは、同じ生活をしたときに床材そのものへ届く傷の量です。

2階の廊下の床。奥に向かって光が映り込んでいます

どこまでやるか。全室でなくてかまいません

最初に書いたとおり、負荷は通り道に集中します。予算に上限があるなら、そこから順に施工するという選び方ができます。

優先度場所理由
高い廊下走る距離が取れ、加速と減速がここで起きます
高い階段面積は小さいのに足が集中し、踏み面の縁から傷みます
中くらいリビング方向転換が多く、水飲みの置き場もここに集まります
低い寝室・使っていない部屋ペットが入らない部屋は負荷がかかりません

階段は見落とされやすい場所です。面積が小さいぶん金額は抑えられますし、床全体を見送るとしても、階段だけ先に施工するという組み方はできます。

部位ごとの金額は単品ごとの価格表で先に確認できます。

持ちの年数は、こちらから断定しません。床材、下地処理の有無、日当たりと湿度、その家での使い方で変わるためです。同じ家の中でも、通り道とそうでない部屋とでは状態の変わり方が違います。

施工したあとの手入れ

コーティングをしても、掃除は必要です。抜け毛も水飲みのまわりのはねも、これまでどおり出ます。変わるのは、汚れがコーティングの上に乗るぶん、床材に染み込む前に拭き取れるという点です。

使う洗剤は中性洗剤を選び、拭き取りはマイクロファイバークロスのような柔らかい布を使います。デッキブラシのような硬いものでこすると、コーティングを剥がしやすくなるため推奨しません。強くこすらなくても汚れが落ちるぶん、コーティング自体も傷みにくくなる、という順序です。

あわせて、爪を短く保つことも効きます。爪が長いほど床に当たる角度が立ち、線状の傷が入りやすくなります。施工の有無にかかわらず変わらないところです。

よくある質問

コーティングをすれば、ペットは滑らなくなりますか?

滑らなくなる、とは言えません。選べるのは滑りにくさの度合いで、滑り止めを重視するならGFガラスコーティング厚膜、軽い滑り止めでよければGFガラスコーティング中膜という選び方になります。

爪の傷は防げますか?

防げます、とは言えません。膜があるぶん爪が床材に直接当たらなくなるので、細かい擦り傷はつきにくくなります。ただし深くえぐれる傷は範囲を超えますし、すでに入っている傷が消えることもありません。

マットとコーティングは、どちらを選べばいいですか?

どちらか一方を選ぶ話ではありません。マットは敷いた面だけに効き、外せば元に戻せます。コーティングは施工した面全体に効きますが、簡単には戻せません。部屋の一部でよく原状回復も残したいならマット、面で効かせたくて長く住む予定ならコーティング、という分け方になります。両方を使っている家もあります。

賃貸でも施工できますか?

建物の条件ではなく、契約の条件で決まります。退去時の原状回復が前提になっている場合、床に手を入れてよいかは貸主の判断です。先に確認していただくのが確実で、確認が取れないうちは、外せるマットのほうが向いています。

施工の日、ペットはどうしていればいいですか?

施工した部屋は、硬化するまで入れません。当日は別の部屋で過ごしてもらうか、預かりを使っていただく形になります。使えない範囲と日数は部屋の数で変わるため、見積もりの段階でお伝えします。工程そのものの違いは入居前と入居後のフロアコーティングの違いに書いています。

保証はありますか?

フロア専用のGFガラスコーティング厚膜には10年保証があります。ただし保証年数と持続年数は別物です。保証には対象外の規定があり、日常生活での傷や、他業者による補修のあと、リフォームによる損傷など、ほかにも条件があります。

まとめ

ペットがいる家の床で問題になるのは、滑りと爪の傷です。滑りにくさは、床に使うガラスコーティングのうち、滑り止めなら厚膜、軽い滑り止めなら中膜という選び方で変わります。ただし滑らなくなるわけではなく、選べるのは度合いまでです。爪の傷も、つきにくくなるところまでで、すでに入っている傷は消えません。負荷は廊下・階段・リビングという通り道に集中するので、全室一括にせず、そこから順に施工するという決め方ができます。